着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(42) 私のきもの生活

年内までに50冊! 行こうと思います。

私のきもの生活

私のきもの生活

藤間紀子 文化出版局  2003/12

 

梨園の女房シリーズです。

11年前に出た本になりますね。以前ご紹介した着物の本(9) 堀越希実子の着物ごよみ  より少し前の出版になります。いまもある「ミセス」という雑誌の姉妹誌、「ミマン」に1999年~2001年に連載していた内容をベースに構成されているようです。「ミマン」はこの本が出るころに廃刊となってしまったようですが、50-60代向けの婦人雑誌だったようです。藤間紀子さんは1945年生まれなので、55歳前後の着姿となり、層にあっていますね。

さてこのかた、ご実家は開業医とのことで、一般のお嬢様として育ったようですが、若いころはそれはお美しく、結婚された頃は数々の雑誌の表紙にもなっていたようです。ご主人は、歌舞伎のみならずミュージカル等で有名な松本幸四郎。お子さんはやはり歌舞伎役者の市川染五郎、女優の松たか子と、もう一人松本紀保というやはり女優の方の3人。その全員を育て、裏方として支えるのはとても大変なことだったかと思います。写真でも常に微笑みを絶やさないお顔が逆にご苦労を感じさせますね…。

 

さて、本ですが、まずご自分の四季の着物やコート等の紹介、家に伝わる着物、着物まわりで愛用しているお店の紹介、自分の着方、の4部構成です。

はじめの2つのパートが多くの部分を占め、たくさんの着物が紹介されています。マネキンや置いた状態でのコーディネートだけ紹介するような本も多い中で、ほぼ全部着た状態で紹介しているのが、この本の一つのこだわりでしょうか。留袖や訪問着といった華やかなものだけでなく、ごく落ち着いた紬、普段着のような小紋、色々な着物が紹介されています。色目からすると、パーソナルシーズンカラーはイエローベースのオータムというところでしょうか。50代ということもあり、全体的には地味ですが、中には志ま亀のハッキリした色の市松小紋を着こなしていたり、義母(初代中村吉右衛門の娘)から受け継いだ紫色の色留袖に施した華やかな刺繍など、目を奪われるようなものもいくつかあります。この点、堀越希実子の本よりは楽しいです。また、着物を受け継いだ娘さんお二人もちょこちょこと登場してくるのもアクセントとなっており、見ていて楽しいですね。また、長女の紀保さんが曽祖母から貰ったという市松人形のおきものセットもかなりのページを割いて紹介されており、長く続く芸能一家ときもののかかわりを知る事ができます。

それにしても、とてもたくさんのお写真なのに、どれも同じようにキレイに着付けているのには驚きます。半衿は白で襟元は同じ角度できっちりあわせ、また帯揚げは見せないでほぼしまう、と着方も統一されています。とはいえ、体格がよいこともありますが、全体的にゆったりとして、きつきつしい感じはしません。さすがきもののプロ!その着姿の秘密が種明かしされるのが4部の「私の着方」パート。なんと、自分の寸法を標準寸法と比較しながら紹介しています。やっぱりいつも自分の納得いくように着るのには、寸法は大事なんですね。これもまた、着物の色柄とは関係ない、着物に対するこだわりの一つですね。これは非常に参考になりました。