着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(29&30) 美しいキモノ & きものSalon 2014秋号

雑誌2冊です。US Vogueの"September Issue”を引き合いに出すまでもなく、日本の着物シーンだって秋が本番なわけですから、年間を通して秋号というのはファッション雑誌で最も力の入る号なはず。日本の2大着物雑誌、並べて比較紹介してみたく、思い切って両方買ってみました。

美しいキモノ 2014年 09月号 (秋号)     きものSalon2014-15秋冬号 (家庭画報特選)

 

美しいキモノ 2014年 09月号 (秋号)

きものSalon2014-15秋冬号 (家庭画報特選)

 

 

表紙は前号に続き鮮やか色が目にまぶしい「美キモ」。モデルは波模様の総絞りの振り袖を着た柴咲コウ。習い事体験の新連載にあわせて、また絞りの特集にも沿う形でのお着物のセレクションでしょうか。「きものSalon」の方は長谷川京子で、明るいコスモス柄の型絵染め。ピンクの帯、さし色もピンクと夏と秋の中間を表したような着物、特集情報よりも女優さんが浮き立って目に飛び込むような表紙になっています。

ちなみにこの2冊、持った時の重さが明らかに違います。それもそのはず、「きものSalon」が194ページなのにくらべて、「美キモ」は372ページもあります。さらに「美キモ」は別冊付録に「最新版皇室のきもの」がついてきます。お値段はこれで100円しか違わないというのはどういう仕組みなんでしょう...!

 

さて「美しいキモノ」の特集は…

・40代から始めるきものレッスン(3) おしゃれな紬&小紋で旅支度(鈴木保奈美

・日本染織の深奥(3) 染色の原点「絞り」の至芸(草刈民代)

他、牧瀬里穂の利く模様のきもの・藤原紀香が案内する「京へのいざない」展(青木奈緒のエッセイ付き)・南野陽子西陣袋帯紹介・南果歩の「きもの四季歴」・柴咲コウの「一日弟子入り・上方舞・山村流編」・草村礼子のフォーマル

と、沢山の記事&どこを切っても女優だらけです。目次に載ってはいませんが、高橋里奈や西山真以といったファッションモデルも登場しています。想定年代は、やはりメイン特集になっている40代を中心でしょうか。読者のヘアメイク改良のページもやはり40-50代の4人となっていますし。ただ、プラチナ世代というネーミングで70代の草村礼子が登場しているなど、幅広いエリアをカバーしようとしていますね。他、20ページ近いフォーマル特集があるなど、たとえメイン特集に小紋と紬を据えようとも、全体としてはフォーマル感が高いです。

木村孝の色無地入門・清水ときの誌上きもの大学、小記事系も充実しています。小記事なのか、広告なのか判然としないページも多いです。そうした記事に絡んで、展示会やイベントの案内ページも非常に充実しています。8月下旬発売ですので、すでにひと月経ってしまってはいますが、10月や11月のイベントもまだまだ沢山ありそうです。リストが欲しいですね…

 

次に「きものSalon」の特集はというと、

・濃い色の美人セオリー

のみ、メイン特集となります。訪問着から紬まで、緑・茶・青・藍・紫・墨といった、通常の柔らかい系の色とは一線を画した切り口。高垣麗子・春香・nahoといった30代のモデルで華やかです。

あとは表紙の長谷川京子複数の着物を着ている巻頭特集・檀れいが着る正倉院宝物写しの着物・フォーマル着物の紹介に続いてのこの4月に披露宴をしたばかりの尾上菊之助夫人瓔子さんの結婚周りの着物紹介・いま、この人のきもの姿が見たい!・榊せい子の茶会ときもの(秋編)・盛装シーンの帯・節子クロソフスカ・ド・ローラの暮らし紹介・コート特集と、それぞれのページ数は少ないものの、「美キモ」に負けない数の特集記事が続きます。

正倉院宝物写しの特集は、良く言う「正倉院」模様というものの原典がわかって面白く、コート特集もなかなか実用的だと感じました。特筆すべきは「いま、この人のきもの姿が見たい!」。なんと、男性三名です。斉藤工(俳優)、村田晃嗣同志社大学学長)、山本隆之(バレエダンサー)。特にバレエダンサーの方、とても素敵です。それにあわせてか、たまたまなのか、森田空美の着付けは「男性の着付け」。

写真は「きものSalon」のほうが素敵ですね。広告だかなんだかよくわからないページが少なく、全体的に出ている人もトータルでは若めで瑞々しい感じです。

 

さて、この2誌の違い。たとえばフォーマル特集で比較すると、「美キモ」の方は「祝賀会」や「園遊会」を念頭に置いた上で真・行・草にわけてという、とても格式張ったカテゴライズを始めるのの比べ、「きものSalon」はお宮参りから結婚式に至るまでの普通の人生イベントに沿って紹介されます。ヘアメイクも「美キモ」はプロのヘアメイクで変身!というノリに比べて、「きものSalon」は「ぶきっちょさんでも出来るヘアメイク」という内容。なんとなく「美キモ」は基本浮世離れしている世界を楽しむ感じで、「きものSalon」のほうはそれに比べたら地に足が着いている感じでしょうか。読む場所が多くコスパが高い、というのはもちろん「美キモ」なのですが、落ち着いて眺められるのは「きものSalon」なのかな、と思いました。 

 

なお、以前に雑誌部数などでの比較をした記事はこちら↓です。