着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(40) 言わぬが花―萬屋に嫁ぎ、獅童を育てて

どんどん行きます。

 

言わぬが花―萬屋に嫁ぎ、獅童を育てて

 

言わぬが花―萬屋に嫁ぎ、獅童を育てて

小川 陽子 2006/3 主婦と生活社

 

こちらはきもののプロである梨園の妻もの分類の本になるかと思います。といっても、ご主人は歌舞伎の一家に生まれながら歌舞伎界を出てしまいました。このため後ろ盾を失った息子さんの二代目中村獅童を、この小川陽子さんが、影になり日向になり下支えした話は有名です。ですので、本当は、梨園の妻ものではなく梨園の母もの、と言ったところでしょうか。先日お亡くなりになった際には号泣する中村獅童の姿がワイドショーで繰り返し放映されていましたね。

さて、本の内容としては、その中村獅童の話を中心に歌舞伎のことが半分、着物に関してのことが3割、残りはおつきあいのヒントという構成です。歌舞伎等の舞台写真もかなりのボリュームなのですが、勿論ご自身の写真、手持ちの着物、着る時のコツ、始末や収納の工夫といった着物に関する写真も惜しみなく掲載されており、見応えがあります。66歳の時の出版になりますが、この本のために撮影したと思しきご本人の堂に入った着姿はとても素敵です。また、文章も、歌舞伎界の有名な母「小川ひな」に長く仕え、日本刺繍をたしなみ、お付き合いに方々まで気を配り、色々な苦労をされてもカラッと明るい気性で、ユーモアのある女性であったことがしのばれる内容です。

 

すでに中村獅童と離婚した竹内結子がまだ妻だった頃の本のため、彼女に見立てた着物の紹介があります。目白の「うちだのきもの」での誂えたという、この3つの着物がとても素敵なので、つたない文章で恐縮ですが、最後にご紹介しておきます。

・淡いピンクグレイの梨地の付け下げ。京友禅で描かれた花輪がしだれ状に配されて、付け下げといえど華やか感もあり、まさに出ず入らずの着物。黒地に家紋の「桐と蝶」を織り出した袋帯を合わせてあります。

・やはり淡い紫と、白地が段がわりになった紋綸子の着物。おそらく小紋地だと思いますが、白地部分に地紋起こしで花をいくつかカラフルに刺繍することで付け下げ扱いになっている凝った着物。こちらの帯は帯は箔紙を織り込んだ四季草花の文様で、こんじき色。

・若草色の一つ紋付き色無地。どちらの帯も合わせられるもの。

写真には「若い方ならこんな3組があればどんな席にもOKよ」のキャプションがついています。きっともう二度と日の目を見ない着物、見れるのはきっとこの本だけです。