着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(57) 昭和モダンキモノ 叙情画に学ぶ着こなし術

ご無沙汰しておりました。その間にも着々とキモノの本は読み進めておりましたので、どんどんご紹介しようと思います。

さてこちら。

昭和モダンキモノ 抒情画に学ぶ着こなし術 (らんぷの本)

昭和モダンキモノ 抒情画に学ぶ着こなし術 (らんぷの本)

2005年1月 河出書房新社 弥生美術館 中村圭子

 

高畠華宵竹久夢二といった画家の作品を紹介しながら、その中に現れる、今ではアンティークきものとして扱われる着物ファッションについて語った本です。大正末期から昭和初期、戦前の日本が、一番元気だった時代ですね。

表紙は昭和2年の高畑華宵のダンスパーティを描いた絵です。こんな絵が、カラーで100点ほど、モノクロでも結構な点数、紹介されています。どのページをとっても、色がやわらかできれい。モダンなモチーフの紹介、画家の紹介、絵の中の着こなしと進んでいきますが、添えられている文章も端正ながらたくさんの情報に溢れています。

途中から弥生美術館館長の古賀美枝子さんの絵へのコメントが入るのですが、その一つ一つも効いています。「でも実際はこんなに着込んだら暑いんじゃないかしら」とか、「紗の着物に袴なんて、現実には着ませんでしたよ」など、どうやら絵の中には色々とファンタジーも含まれているようなので、全部真似しちゃいけませんね。 

 

当時の雑誌のファッションページをそのまま引き写したページも面白かったです。たとえば夏帯八題、というページから紹介してみましょう。8つの帯がすきまなく並べて写真で紹介され、右上にキャプションがついています。

(1)中央は金色地の繻子で、左右は白地の紗という、変わり生地。サビ緑、淡古代、洗朱、藍クリーム色などで模様を出した上品なもの。26、7歳向き。19円30銭。…(途中略)…(7)黒と銀の大胆な色彩の地に、臙脂の朝顔を出した風通で、モダンな20歳前後向き。47円50銭。…」

って、ずいぶんと対象年齢を絞っているのにびっくりしました。今の着物雑誌でも、年代はわりと指定して紹介しているケースが普通ですが、昔はもっとすごいのですね。二十歳前後だけ刻んでいるわけではなく、30代や40代でも同じです。どういうわけなんでしょうね。 

まったく読み飽きるところがない良い本でした。