着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(56) 着物の悦び

こんにちは。

本日はこちら。

 

着物の悦び―きもの七転び八起き (新潮文庫)

着物の悦び―きもの七転び八起き (新潮文庫)

1996/11/29 林 真理子

 

こちらは実は私が生まれて初めて読んだ着物の本だったと思います。単行本が出たのが1992年12月。今から20年以上前です。

31歳で、弟の結婚式のために作った色留袖をきっかけにきものにハマった著者の、銀座で気になる呉服屋を見つけ、思い切って入って以来の馴染みになったり、友人と和の習い事を楽しんだり、コーディネートに悩んだり、展示会に出かけては着物を買ったり、京都にお出かけしたり…というきものライフが綴られます。って、あれ、このざっくりした内容って、以前ご紹介した平松昭子の着物事件簿とものすごく似てますね。趣味が高級な着物寄りなのも、舞を習っているのも同じです。平松昭子の本から、時代を10年早くし、着物を買いまくる量をヒトケタあげ、TPOやマナーなどのいろいろなきもの知識をぎっしり文章で盛り込むとこちらの本になる感じでしょうか。

きもののマナーの情報としては、もともと婦人画報系などの実用書はあったでしょうが、こうして気軽に読める本はそれまで無かったのではないかと思います。インターネットの無い時代の初心者に、とてもありがたい指南書になったのではないかな、と思います。とはいえ、誰もがこんなお金をかけてはいられないので、こういうやり方でしか、きものに詳しくなる道がない、と思ったら大変なことになってしまいますね。私も当時読んだときは、きもの=たいそうお金がかかるもの、という認識がすっかり刷り込まれてしまいました。そうでない着物もある、と知ったのは大分後のことです。

文庫版のあとがきとして、「とうとう手持ちの着物は120枚を超えた」とあります。ということは約10年で120枚、月イチペースです!当たり前ですが、ネットショッピングもない時代ですし、リサイクルを買うような御性分の方でもないでしょうから、貰い物以外はすべて誂えかとおもいますが、どのくらいお金かかったんでしょうねぇ。そんな素晴らしい着物たちは口絵カラーに何枚か紹介されています。文中にも出てくるお気に入りの「志ま亀(しまかめ)」のものが中心です。表紙の和の模様も、そうして紹介された訪問着の中の一枚をアップにしたもの。これこそ、きもの愛。ですね。

エッセイの一番最後に、着物が好きになったらおすすめ、の着物の描写が細かい作家として、有吉佐和子宮尾登美子谷崎潤一郎渡辺淳一をあげられています。有吉佐和子は「真砂屋お峰」は読みましたが、「乱舞」「連舞」「墨」はまだなので読んでみようかな?