着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(24) きもの箪笥

さて、エッセイものです。

 

きもの箪笥

きもの箪笥

澤地 久枝 

淡交社刊、2010年3月発行。

 

この表紙ステキだと思いませんか?一見は非常に地味でシンプルですが、生成り色の地には何か模様が見え、細かな点であらわされている抽象的なシンボルは、よく見ると和箪笥の金具を表しています。装幀は安野光雅。うぅ、さすがです…!表紙をめくるとわかりますが、この地模様は、著者がお持ちの現代作家、草川メイの紙布帯から取られたものだそうです。

冒頭は6ページにわたる著者近影。鮮やかな結城紬に龍村平蔵の帯での戸外でのスナップ、城間栄順の紅型に加良錦の袋帯での室内の写真。著者は1930年生まれですので、80歳といえば老人といって良い年齢ですが、そうとは思えない生命力が溢れています。

娘時代が戦後にあたる方ですから、日常的に着物を着なくなったちょうどはじまりのご年代だと思いますが、40代の終わりから着物を着られるようになったとのことです。あとのほうに1983年のスナップ写真があるので、それが着始めのころかと思います。

 

14章にわたって著者がお持ちの着物や帯について語る「きもの箪笥」と、ご自身のきもの来歴を俯瞰的に綴る「きものの暦」の2部で構成されています。

 

「地味なもの書きであるわたしの財布は、けっして大きくはない。フリーの書き手として三十八年、本気できものを着る気になっておよそ三十年。数よりもいいものを求めるべく心がけてきた。」

 

という言葉ではじまるお手持ちの着物は、どれも来歴のある丁寧な仕事のもの。何枚もつい集めてしまう間道(縞)の帯、紅型を中心にたくさんの型染め、現地で買わずには帰れなかった大島紬芭蕉布、薩摩絣、100年前の刺繍の帯を修理したもの、現代作家など、写真や思い出をまじえて紹介されていきます。京都の友禅や手描きの染め帯など、はんなり系とは逆のベクトルで、骨太で一生ものなコレクションです。そういったものがまさに似合う方だと感じる端正な文章、力強い言葉。いくつもの有名な作品のあるノンフィクション作家の方だけあって、圧倒されます。まずは「琉球布紀行」を読んでみたくなりました。

琉球布紀行 妻たちの二・二六事件 (中公文庫) 滄海(うみ)よ眠れ―ミッドウェー海戦の生と死〈1〉 (文春文庫)

他にも沢山の作家や本の名前が紹介され、いろいろと読書欲を刺激されるエッセイです。

歳月 きもの自在 父・こんなこと (新潮文庫) 芭蕉布物語―私版本 (1943年)

 

 

 

 

 

第二部にあたる「きものの暦」は、ご家族の写真からつづる着物と家族の記憶と、買い物記録ノート「きもの帳」について。いずれも短文ですがこれもステキな文章です。「きもの帳」は早速マネしようかと思います(笑)

なお、淡交社の「なごみ」という雑誌に2008年に連載されたものに加筆した内容、とのことです。「なごみ」も読んでみたくなりました。