着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(11) 初めて買うきもの

ちょっと昔の本は安くアマゾンのマーケットプレイスで買ってます。

初めて買うきもの (CLASSY COLLECTION)

光文社、1992年11月刊行。

画像が無いみたいなのであげておきます。

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文庫版も出ていますが、こちらは上質な紙で出来たオールカラーの本です。

さて、「堀越希実子の着物ごよみ」を読んだ後に、他に歌舞伎役者の妻の書いた着物の本ってあるのかな?と探してみたらこちらが見つかりました。波野好江さんは18代目中村勘三郎の妻、そして7代目の中村芝翫の娘。勘九郎七之助の母、と歌舞伎界でも最も有名な「梨園の妻」ではないでしょうか?この本が出た頃、波野さんは30代になったばっかり、古風な日本美人の若妻といった風情です。体型はとっても華奢な方のようです。(もしかしてポーズの取り方のせいかもしれないけど。ポーズ写真を後でご紹介します)

さて、1992年といえばバブル崩壊でかなり暗い風潮だったと思いますが、いくらお嬢様雑誌のCLASSYといえども、先駆けで反映してか、第一章は初めての着物を買うのに「いくら用意すればいいか」という妙に実際的な内容から始まります。しかしそのお値段は…色無地17万、いい袋帯40万、長襦袢5万を筆頭にその他こまごました小物、草履やバッグも含めて合計73万! です。どうなんでしょう73万円。バブルの残り香ここにあり、でしょうか…

たしかに色無地一枚あればっていうのは本当に詳しい方が最後に皆おっしゃることではありますが、究極ですよね…が、いきなり色無地の強気押しです。なので、この第一章で「初めて買うきもの」というテーマ自体が終わってしまうわけですが、さすがにそれで一冊ってわけにいかないので、その後は他の帯の合わせ方、柄付けの善し悪しだの、はては色無地そのものですら春と秋で色合いを変えたほうがいい、など、結局一枚じゃすまないでしょー!という着物を買う時のあれこれのお話がつづきます。トータルで見れば結構現代でも参考になるベーシックな内容だと思います。特に浴衣の「カジュアル浴衣」と「高級浴衣」の区別の方法などは、なるほど、と思いました。

金額の明記はその後も色無地でも生地によっての細かい値段の違いの紹介などあったり、なかなか実践的です。今でも通じるかどうかはよくわかりませんが…

それにしても後書きにもあるように、歌舞伎界の奥様方は、歌舞伎座のロビー等でお得意様にご挨拶するのがお仕事なので、本当に着物を美しく着るのが仕事なのだな、と思わされます。この本は着姿のお写真が沢山紹介されていますが、外での自然光らしき撮影が多いように見えます。1992年って、20年以上前ですので、写真のデジタル修正等は殆ど出来なかったと思いますが、美しくポーズをつけて映っているのに歌舞伎の血をひしひしと感じます。

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こちら、小紋と髪型のボリュームバランスを紹介している写真。チョウチョの帯と飛び絞りの帯揚げが可愛いです。この片足をかなりしっかりと後ろに引くのが美しく写るポイントなどではないだろうか?今後真似したいです。

最後になりますが、着物を選ぶために反物を手にしているような時は自然な笑顔なのに、上記のようなポーズ写真のときは笑顔もちょっと固かったり、お澄まし顔になってしまっているのが面白いと思いました。きっとホントに着物がお好きな方なのでしょうね。いつかどこかでステキなお姿をお見かけしたいものです。