着物book日記

おキモノ好きが着物関係の本を問わずがたり、というblog。

着物の本(10) 色っぽいキモノ

少し間が空きましたがどんどん行きます。

色っぽいキモノ

色っぽいキモノ

2006年、河出書房新社発行

 

この表紙、アマゾンで見るたびにすごーくカッコいいなとずっと思っていました。着物の仕組み上、そうはならない矢羽根の柄の置き方がとても目立ってステキ。森本美由紀っぽいなと思っていましたがコダカナナホさんという方のイラストです。

この表紙から、勝手に大正アンティークの着こなしを紹介する本なのかな?と思ったら違いました。

「姐さんっぽい」着こなしの色っぽさについて、古今東西(もちろん日本内だけですが)の文献をまじえながら熱く紹介する、という本です。

著者の井嶋ナギさんという方は存じ上げませんでしたが、江戸文学を大学で専攻したライターさんなんですね。

著者サイトがこちら http://nagi-ijima.com

しかし、その紹介の幅といったら広い事!宇野千代や森田たまといった着物エッセイで有名な人たちだけではなく、永井荷風森茉莉吉屋信子など。そして江戸時代の歌舞伎の演目や戯作、はては「極道の妻たち」や「修羅雪姫 」といった映画まで!セリフや文章の抜き書き、浮世絵や映画の写真の紹介もふんだんに、読者を「色っぽいキモノ」の世界に連れ込みます。

 

個人的にはこうした意図的に婀娜っぽさを強調した着こなしは出来そうな気がしませんが、文学や映画の中に表れるこうしたキモノで表される女性の粋で色っぽいさまざまな表情をこれでもかと紹介しているのは、純粋に読み物としてとても面白いです。あいまあいまに着こなしワンポイントや、最後に基本知識が出てきますが、これだけでは多分着られません。あくまでもキモノをまったく知らない方がこの本を楽しむための補助のようなものです。

それにしても、このちょっとB級漂うけど知的な部分もあるマニアックなアプローチ…編集プロダクションは「ブルー・オレンジ・スタジアム」、たしかナンシー関も在籍していた石黒謙吾という有名な編集者の会社ですよね?つながりに結構納得です。