着物の本(54) 大正ロマン着物女子服装帖
今日はこちら。
大野らふ
2008/9 河出書房新社
あら、画像を貼ってみて初めて気がつきました。セルのチェックの着物は大きな矢羽根模様ですね。
大野らふさんは根津にある「ポニアポン」というアンティーク着物店の店主。「ポニアポン」ってどういう意味?なのだろう?と調べてみたら、「ニッポニアニッポン」=トキから名付けられたそうです。絶滅寸前の日本の鳥…それってアンティーク着物と重なる部分もあるのかもしれません。
そもそも、アンティーク着物というモノが、残っているかどうか以前に、作られるようになったのは、明治後半に絹が大量に機械生産出来るようになった後、第二次世界大戦が始まるくらいまでのせいぜい50年間くらいではないでしょうか。こちらから絹織物の原料となる生糸の生産量グラフをお借りしてきました。
十分に国内向きの生糸の余裕が出てくるのは、1915年~1920年くらいからでしょうか。1935年=昭和10年に絹の生産量はピークを迎え,その時は1万トンちょいは自国内で消費するしていたことになります。このピーク前後の10年が、日本の絹ファッションは間違いなく黄金期であり、xs色んな冒険が出来た時代なのではないかと思います。1935年の日本の人口は7000万くらいでしたので、1000kgを7000人で消費=6-7人で1反分くらいのメド?ちょっと余裕のある家庭の婦女子なら、1年に一度くらいは絹の着物を誂えられたってところでしょうか。
この本は、主にその頃に作られたアンティーク着物の魅力を紹介したものとなっています。33のコーディネートの中には、もちろんお召しや銘仙、ちりめんの絹ものだけでなく、表紙のセルをはじめとしたモスリン、木綿や浴衣ものも紹介しています。帯も丸帯から半幅まで、いろいろ。戦後や現代のものとも組み合わせての「リアルスタイル」という名で、完全なアンティークは苦手…という向けの提案もされています。
完全に大正時代のものだけにこだわる、というよりも、アンティーク好きの大野さんの目で厳選された、特に素敵な着物や帯たちを現代の人たちにも魅力的に見せるように配慮されている、という印象です。
同じ着物や帯でも、グラビアでモデルが着こなしていたり、柄のアップの解説があったりと何回か別のページに登場しますが、それぞれどのページに行けば同じものが別の角度で見られるのかきっちり紹介してあるのに愛を感じます。
他にもアンティーク着物を着るコツ、大正時代のファッションの紹介などもあり、これ1冊がそのままアンティーク着物入門になる内容です。
Rumirockさんや、以前にご紹介した通崎睦美さんのことなども紹介されています。いろいろ、つながっているのですね。